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第五回学術大会について

2007年12月8日(土),9日(日)に,ジェンダー法学会第五回学術大会を文京学院大学にて開催しました。

報告内容はジェンダー法学会学会誌第5号に掲載しています。

大会スケジュール

12月8日(土)
13:30‐17:00
シンポジウムⅠ
テーマ 生殖補助医療とジェンダー
司会 戒能民江(お茶の水女子大学),棚村政行(早稲田大学)
パネリスト 総論・趣旨説明:金城清子(龍谷大学)
江原由美子(首都大学東京)
ジェンダーの視点から見た生殖補助医療
木村くに子(東京家政学院大学)
生殖技術と「リプロダクティブ・ライツ」
石井美智子(明治大学)
生殖補助医療と家族法―子どもの視点から
17:30‐19:30 懇親会  文京学院大学 B’s Cafe (参加費5,000円)
12月9日(日)
10:00‐11:50
個別報告
梅澤彩(椙山女学園大学)
生殖補助医療における子の出自を知る権利について
―ニュージーランドにおける生殖補助技術法を参考に―
谷口真由美(大阪国際大学)
リプロダクティヴ・ライツの生成
12:00‐14:00 総会・休憩
14:00-17:30
シンポジウムⅡ
テーマ ジェンダー法学の可能性 ~ ジェンダー概念をてがかりに
司会 広渡清吾(東京大学),長谷川京子(兵庫県弁護士会)
パネリスト 趣旨説明:広渡清吾
三成美保(摂南大学)
「ジェンダー」概念の展開と有効性―学際的協力の可能性
小島妙子(仙台弁護士会)
フェミニズム法理論が当面するもの―課題と方法
角田由紀子(明治大学、静岡県弁護士会)
日本社会とフェミニズムの法実践
大西祥世(地方自治総合研究所)
ジェンダー法学から見た憲法学の再構築―男女共同参画行政の実践を例に

プレ企画(会員のみの参可で開催)

テーマ:DV「殺人」と正当防衛論
日時:12月7日(金)
場所:お茶の水女子大学
報告者:沼崎一郎(東北大学),戒能民江(お茶の水女子大学)ほか
コメンテーター:森川恭剛(琉球大学)

掲載レジュメについて
掲載されているレジュメの無断転用・引用・悪用を禁止します。掲載されているレジュメの著作権は報告者であるレジュメ作成者に帰属します。

【会員からのお便り】第5回学術大会の感想

  • ■プレ企画  12月7日
    <DV「夫殺し」と正当防衛>
    衝撃的とも思えるテーマは,社会構造に深く組み込まれた「ジェンダー」の問題を指摘するものです。沼崎先生が提供された裁判事例からは,夫からの暴力に追い詰められた被害者を,加害者にせず「被害者のまま救い出す」ことの大切さを痛感しました。一同が裁判官,検察官のジェンダー・バイアスの現況を共有し,改善の方策を議論している間は,外の寒さも忘れてしまうようでした。■シンポジウムⅡ  12月9日
    <趣旨説明(広渡先生)>
    広渡先生の落ちついた柔らかな語りかけが印象的でした。プロイセン一般法には両性具有者の規定があったとのこと。我が国では21世紀になってGIDに関する法の整備が行われましたが,実は19世紀にあった規定の復活にすぎないとは意外でした。

    <「ジェンダー」概念の展開と有効性(三成先生)>
    ジェンダー法学を知って間がなく,歴史的な知識不足を感じていた折でしたので,ジェンダー法学に関する歴史的な流れを教えていただき,とても勉強になりました。三成先生のエネルギッシュで力強い語りかけに勇気付けられた気がします。

    <フェミニズム法理論が当面するもの(小島先生)>
    優しげな雰囲気の小島先生に,①男性中心の「法」運用がなされてきたことを是正する必要性,②「正義」の内容が時代によって変遷すること,を明解にお話いただいて勉強になりました。先生にはDVに関する論文も多く,私が「女性に対する暴力」を研究テーマとしていることもあり,注目している先生です。

    <日本社会とフェミニズムの法実践(角田先生)>
    百戦錬磨で一騎当千の弁護士でありながらも,気さくで気取らない角田先生。女性弁護士が1%に過ぎなかった時代から現代まで,事件を通して具体的にお話いただいた中に,この国の変わらない面を見たような気がします。先生の「目指していたところと今の行き着いたところは少し違うように思う」との含蓄あるご発言は,これからも考えていかなくてはならない部分のご指摘だと思います。先輩方の勇姿を拝し,頑張ることを誓える後輩でありたいと思います。

    <ジェンダー法学から見た憲法学の再構築(大西さん)>
    学術大会の最後に,西尾学術奨励賞を受賞されたフレッシュな大西さんが発表され,ジェンダー法学会の若手会員に対する期待がうかがわれました。しっかりした論述,質問のかわし方にはちょっぴり老獪さも感じさせる大西さん。将来が楽しみな方です。女性論には,憲法学的論述が最もフィットするように思います。

    川口律子(中央大学大学院法学研究科後期課程在学)